〜健康ニュース〜
脳の回復、血中酸素の割合で予測 濃度26%以上 4割社会復帰
救急搬送された心肺停止患者の脳機能の回復見通しを、脳の局所的な血中酸素の割合「酸素飽和度(rSO2)」から予測する方法を、大阪府済生会千里病院千里救命救急センター(大阪府吹田市)の伊藤賀敏(のりとし)・心血管内治療室長らが開発した。
rSO2が25%以下だと9割が24時間以内に死亡した一方、26%以上の場合は4割が社会復帰し、値が高い人ほど回復程度が良かった。適切な治療法を素早く選択し、救命率を高めることに生かせる。阪神大震災などの大規模災害時に搬送された患者の治療優先順位を決める「トリアージ」にも活用できる可能性がある。
脳の神経細胞は、心停止で血流が長時間止まると死滅するが、心拍再開後も細胞死が進み、脳死や植物状態に至るケースがある。
伊藤室長らは、心臓のバイパス手術などをする際、麻酔科医が前頭葉の大脳皮質を流れる血液中のrSO2を計測して脳の状態を把握し、呼吸や血圧などの管理の目安にしていることに着目。rSO2は、酸素を運搬するヘモグロビンの血中濃度から求められ、近赤外光を額に10秒程度あてるだけで計測できる。
同センターへ一昨年4月から1年間に搬送された18歳以上の82人について、来院から3分以内のrSO2を測定。健康な人のrSO2は80〜50%だが、82人のうち、25%以下だった52人は、47人が24時間以内に死亡。残りの5人も脳機能が回復せず、感染症などで亡くなった。
一方、26〜40%の9人は6人が死亡、1人が植物状態になったが、2人は社会復帰できた。41%以上では21人中、5人が死亡し、5人が脳に重い後遺症が残った状態で転院したものの、10人が社会復帰し、1人は軽い後遺症で済んだ。
4月からは大阪大、京都大、慶応大など国内の計10施設と共同研究を計画している。伊藤室長は「rSO2の値を高く保つ治療をすれば、社会復帰の可能性が高まるだろう。数値の常時監視で、効果的な蘇生治療も行える」と話す。
(2011年1月12日 読売新聞)
速く歩く人ほど長生き…米医師が65歳以上調査
【ワシントン=山田哲朗】歩くのが速い高齢者ほど長生きする傾向があるという研究結果を、米ピッツバーグ大学の医師らがまとめ、米医師会雑誌で発表した。
研究チームは、65歳以上の男女計3万4485人の歩行速度を記録した過去のデータを解析。普通に歩いた時の速さは、平均で秒速0・92メートル(時速約3・3キロ・メートル)だったが、どの年齢でも同1メートル以上で歩く人は比較的長く生き、歩くのが速い人ほど余命が長かった。一方、同0・6メートル以下の人は早く亡くなることが多かった。
速く歩くには強い心肺機能や筋力が必要で、歩行速度が健康度の目安になったと考えられる。現在、高齢者の余命を予測する良い指標はないため、研究チームは「歩行速度に注目すれば、高齢者の健康管理などに役立つ」と話している。
(2011年1月9日 読売新聞)
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